
「警備員を募集しても集まらない」「誘導員の人件費が年々重くなっている」。駐車場を運営する会社や、商業施設・病院・飲食店の施設管理者から、こうした声を聞くことが増えました。
先に結論をお伝えすると、駐車場の警備員・誘導員が行っている仕事のうち「空き状況を伝える」「危険を知らせる」という部分は、サイネージやセンサー、AIカメラで自動化できます。人が立たなくても、案内と注意喚起を続けられる仕組みはすでに実用化されています。
この記事では、警備員不足が起きている背景、人を置かずに誘導・案内する仕組み、そして実際に省人化を実現した4つの導入事例を、初めての方にもわかりやすく解説します。
1. 駐車場の警備員不足・人手不足はなぜ起きているのか
駐車場の警備員不足は、個別の会社の採用力の問題ではなく、業界全体の構造的な問題です。
労働政策研究・研修機構がまとめた厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年度分)によると、全職業の有効求人倍率が1.10倍であるのに対し、警備員を含む「保安職業従事者」は6.41倍で、職業大分類の中で最も高い数値でした。求職者1人に対して6件以上の求人がある、つまり「募集しても人が来ない」状態が数字に表れています。
『日本労働研究雑誌』2025年11月号の論文でも、警察庁の統計では2024年末時点の警備員数が約58万8千人であること、そして業界団体が交通誘導警備員の人手不足を特に深刻と見ていることが紹介されています。
この人手不足は、駐車場の現場では次のような形で表れます。
- 人が確保できない:土日やセール時など、混雑する日ほど誘導員が手配できない
- 人件費が上がり続ける:配置人数が多い施設ほど、運営コストへの影響が大きい
- 配置できない時間帯が生まれる:夜間・早朝や、週末だけ稼働する駐車場に常時人を置くのは現実的でない
- 安全対策が後回しになる:「リスクはあるが、人を置くほどではない」場所が対策されないまま残る
今後も人口減少が続くことを考えると、「人を増やして解決する」という方法は年々難しくなっていきます。ハックスターでも人手不足・人件費高騰に備えたいというご相談が増えています。
2. 警備員の仕事は「機械に任せられる部分」と「人が必要な部分」に分けられる
省人化を考えるときに大切なのは、「警備員をなくす」ことから考えるのではなく、「警備員が今、何を伝えているのか」を分解してみることです。
駐車場で警備員・誘導員が行っている仕事は、大きく3つに分けられます。
| 仕事の種類 | 具体例 | 自動化のしやすさ |
|---|---|---|
| ① 情報を伝える | 「満車です」「3階が空いています」「ここで待機しないでください」「本日は休業です」 | ◎ サイネージ・満空表示で代替しやすい |
| ② 危険を知らせる | 「歩行者が来ます」「対向車が来ます」「一時停止してください」 | ◎ センサー・AIカメラ+警報で代替しやすい |
| ③ その場で判断・対応する | 事故やトラブルの対応、体の不自由な方の介助、イレギュラーな交通整理 | △ 人による対応が必要 |
①と②は、決まった情報を決まったタイミングで伝える仕事です。機械はこの種の仕事が得意で、24時間休まず、同じ品質で続けられます。
①②を機械に任せれば、限られた人員を③の「人にしかできない仕事」に集中させることができます。これが、駐車場の省人化の基本的な考え方です。
3. 人を置かずに誘導・案内する4つの仕組み
では、①②を自動化する仕組みには、どのようなものがあるのでしょうか。代表的な4つを紹介します。
満空・混雑表示(空き状況を自動で伝える)
駐車場の空き状況を「満・混・空」などで表示し、ドライバーが入庫前に判断できるようにする仕組みです。警備員が目視や無線で把握して口頭で伝えていた情報を、満空表示灯や屋外デジタルサイネージが自動で表示します。
タイマーによる表示の自動切替(時間帯ごとの案内を自動で出し分ける)
「開店前」「営業中」「営業終了」「休業日」など、時間帯や曜日によって変わる案内を、あらかじめ登録したスケジュールどおりに自動で切り替える仕組みです。看板の掛け替えや、警備員による口頭案内が不要になります。
車両検知センサー連動の警告表示(対向車の接近を知らせる)
センサーが車の接近を検知したときだけ、サイネージや回転灯、ブザーで警告を出す仕組みです。見通しの悪いスロープやカーブ、出庫口などで、誘導員の代わりに「今、車が来ています」と知らせます。出庫時の注意喚起には出庫注意灯・出庫警報システムも使われます。
AIカメラによる横断者検知(歩行者・自転車の接近を知らせる)
AIカメラが歩行者や自転車を見分けて検知し、ドライバーに警告する仕組みです。歩道をまたぐ出入口など、これまで警備員が立って安全確認をしていた場所で活用されています。詳しい仕組みはAI交通誘導とは?やAI警備システムとは?のコラムでも解説しています。
4. 警備員・誘導員を置かずに誘導・案内を実現した事例4選
ここからは、ハックスターが実際に手がけた4つの事例を紹介します。施設の種類も課題もそれぞれ異なりますので、ご自身の駐車場に近いものを探してみてください。
事例1|商業施設:毎日約20名の交通誘導員に頼っていた混雑案内をデジタル化

施設:バロー横浜下永谷店様(自走式立体駐車場 292台/3F・4F・屋上)
導入前の課題:開業後の利用者増加で周辺道路に渋滞が発生。満空表示システムがなく、毎日約20名の交通誘導員が目視と無線で混雑状況を確認しながら対応しており、運営コストが増大していました。
導入した仕組み:多機能屋外デジタルサイネージ「P-Vii」2台を敷地入口と出口側に設置し、満空管理システム・出口車両検知システムと連携。屋上・4F・3Fの混雑状況を「満・混・空」で、さらに出口の混み具合もリアルタイムに表示します。
結果:警備員が目視・無線で行っていた混雑状況の把握と案内をシステムが自動で担う運用に移行。毎日約20名体制だった場内交通誘導員の大幅削減と、周辺道路の渋滞改善を目指した運用が始まっています。営業時間や休業日、年末年始の案内もタイマーで自動切替しています。
▶ 事例の詳細:商業施設の誘導員をデジタルで省人化|バロー横浜下永谷店様
事例2|市役所:混雑時に警備員約4名が行っていた案内をサイネージが代替

施設:静岡市役所静岡庁舎 地下駐車場(約90台)
導入前の課題:地下駐車場への入庫を待つ車が地上に滞留し、周辺の通行や安全に支障が出ていました。混雑時には4人程度の警備員が「待機禁止」の案内・誘導にあたっていましたが、人件費の負担と人手確保の難しさが課題でした。
導入した仕組み:地上の車から見える位置に、地面埋め込み式のデジタルサイネージ「P-Vii」を設置。開庁時間帯は「庁舎専用駐車場」である旨とリアルタイムの満空情報を表示します。
結果:警備員が口頭や身振りで伝えていた「満車・空きあり」「待機禁止」の情報を、サイネージが自動で伝えるようになりました。さらに閉庁時間帯は一般向け時間貸し駐車場の案内に自動で切り替わり、1台で3つの役割をこなしています。
▶ 事例の詳細:誘導業務をサイネージが代替|静岡市役所静岡庁舎地下駐車場
事例3|大型家電量販店:誘導員を配置せず、車が来たときだけ警告を出す

施設:都内の大型家電量販店 地下駐車場(週末のみ稼働)
導入前の課題:カーブしたスロープで、上り車両と下り車両がすれ違う際の接触事故リスクがありました。「一時停止」の表示は見落とされがちで、誘導員の配置も検討されましたが、週末限定の稼働でリスクの発生頻度も低く、常時人を置くのは人件費の面で過剰と判断されました。
導入した仕組み:上り車線のセンサーが車の接近を検知すると、下り車線側のサイネージが「注意」「一時停止」を表示。ブザー音と回転灯も併用し、目と耳の両方に訴えます。
結果:誘導員を配置することなく、必要なタイミングにだけ確実に注意喚起できる仕組みが整いました。センサーとサイネージの間はワイヤレス通信のため配線工事が不要で、通常の約3分の1の工期で導入できています。
▶ 事例の詳細:駐車場カーブの接触事故防止事例|都内某大型家電量販店 地下駐車場
事例4|物流施設:警備員不在でも、AIカメラが歩行者・自転車を検知して警告

施設:大光輸送株式会社様 トラックヤード
導入前の課題:2つの敷地の間を一般の歩行者用道路が横切っており、車両の出入り時に歩行者・自転車と接触するリスクがありました。夜間や大型車両の通行時も含めて、安定して注意喚起できる仕組みが必要でした。
導入した仕組み:AIカメラ・サイネージ・パトランプを組み合わせた横断者検知警報システム。通常時は一時停止・安全確認を促す表示を行い、歩行者や自転車を検知すると「横断者注意」などの警告に自動で切り替わります。
結果:ネットワークやサーバーが不要なスタンドアローン設計で、設置後は自動で稼働。警備員を配置することなく、出入口の安全確認を継続的にサポートしています。施工後には、歩行者が警告表示に反応する様子も確認されました。
▶ 事例の詳細:警備員不要の出入口安全対策|大光輸送様トラックヤード
5. 4つの事例を比較:自分の駐車場に近いのはどれか
| 施設 | 人が担っていた(担う予定だった)仕事 | 代わりに導入した仕組み |
|---|---|---|
| 商業施設(292台) | 約20名の誘導員による混雑状況の把握と場内誘導 | サイネージ+満空管理+出口車両検知 |
| 市役所(約90台) | 約4名の警備員による満車・待機禁止の案内 | 埋め込み式サイネージ+満空表示+タイマー切替 |
| 家電量販店(週末稼働) | カーブスロープでの誘導員配置(検討段階) | 車両検知センサー+サイネージ+ブザー・回転灯 |
| 物流施設(トラックヤード) | 出入口での歩行者・自転車への安全確認 | AIカメラ+サイネージ+パトランプ |
4つの事例には、共通点が3つあります。
- 伝える情報を絞っている:「空いているか」「危険が近づいているか」という、ドライバーが今知りたい情報だけを表示している
- 判断の前に伝えている:入口にたどり着く前、スロープに入る前など、ドライバーが行動を決める手前で情報を出している
- 人の手を介さず動き続ける:センサー連動やタイマー設定により、設置後は担当者が操作しなくても稼働する
混雑案内に人手がかかっている場合は事例1・2、事故リスクのある場所に人を置けない場合は事例3・4が参考になります。施設の種類ごとの対策は、商業施設や工場・物流施設のページでも紹介しています。
6. 導入前に確認しておきたい4つの注意点
省人化はメリットの大きい取り組みですが、機器を置けばすべて解決するわけではありません。検討の前に、次の4点を確認しておくことをおすすめします。
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すべての業務を機械に置き換えられるわけではない:事故やトラブルへの対応、介助が必要な方への対応、大型イベント時の特別な交通整理などは、引き続き人による対応が必要です。「ゼロにする」ことより「人にしかできない仕事に集中させる」ことを目標にすると、無理のない計画になります。
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現地調査が欠かせない:カメラやセンサーは、設置位置や周囲の環境で精度が変わります。事例4では、桜の木や植栽による季節ごとの見え方の変化まで考慮し、現地調査とテストを重ねて設置位置を決めました。
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電源と通信の条件を確認する:電源をどこから取るか、機器同士を有線でつなぐか無線にするかで、工事の費用と期間が大きく変わります。
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表示内容は「ひと目でわかる」ことを優先する:運転中のドライバーが読める情報量には限りがあります。伝えたいことを詰め込みすぎないことが、効果を出すポイントです。
出入口まわりの対策を幅広く知りたい方は、少ない警備員で安全を確保したいのページもあわせてご覧ください。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 駐車場の警備員を減らすには、まず何から始めればよいですか?
A. まず、警備員が現場で「何を伝えているか」を書き出すことから始めます。「満車・空車の案内」や「待機禁止の呼びかけ」のように決まった情報を伝える業務は満空表示やデジタルサイネージで、「対向車や歩行者の接近を知らせる」業務はセンサーやAIカメラで自動化できます。
Q2. 警備員がいなくても、駐車場の安全は確保できますか?
A. 「危険の接近を知らせる」という役割は、車両検知センサーやAIカメラと警告表示の組み合わせで自動化できます。物流施設の事例では、警備員を配置せずにAIカメラが歩行者・自転車を検知し、サイネージとパトランプでドライバーに注意喚起しています。ただし、事故発生時の対応など人の判断が必要な場面は残るため、現場に合わせて人との役割分担を決めることが大切です。
Q3. 警備員を完全にゼロにすることはできますか?
A. 施設の条件によります。292台の立体駐車場を持つ商業施設の事例では、サイネージによる混雑表示を導入し、毎日約20名体制だった場内交通誘導員の大幅削減を目指した運用が始まっています。一方で、繁忙期やイベント時には一時的に人を配置するなど、機械と人を組み合わせる運用が適している施設もあります。
Q4. 導入費用はどのくらいかかりますか?
A. 費用は、機器の種類と台数、検知方式、電源工事や配線工事の有無によって変わります。ワイヤレス通信を採用して配線工事をなくし、通常の約3分の1の工期で導入した事例もあります。現地の状況で構成が変わるため、無料見積でのご確認をおすすめします。
Q5. 小規模な駐車場や、週末しか使わない駐車場でも導入する意味はありますか?
A. あります。むしろ「常に人を置くほどではないが、リスクはある」という駐車場ほど、必要なときだけ自動で作動する仕組みが向いています。週末のみ稼働する地下駐車場の事例では、誘導員を配置する代わりに、車が接近したときだけ警告を出すシステムを導入しました。
Q6. インターネット回線やサーバーがなくても使えますか?
A. 製品によっては使えます。ハックスターの横断者検知警報システムは、ネットワークやサーバーが不要なスタンドアローン設計で、設置後は機器単体で自動稼働します。
そのほかの疑問は、駐車場の渋滞・混雑・事故に関するよくある質問にもまとめています。
8. まとめ:「人を増やす」から「人が立たなくても回る」へ
この記事のポイントをまとめます。
- 警備員を含む保安職業の有効求人倍率は6.41倍(2025年度)。警備員不足は業界全体の構造的な問題で、採用だけでの解決は難しくなっている
- 警備員の仕事のうち「情報を伝える」「危険を知らせる」は、サイネージ・センサー・AIカメラで自動化できる
- 商業施設・市役所・家電量販店・物流施設の4事例では、人を置かずに誘導・案内・注意喚起を実現している
- 成功のカギは、伝える情報を絞ること、ドライバーが判断する手前で伝えること、そして現地調査にもとづいた設計
「誘導員の人数を見直したい」「警備員を置けない時間帯や場所の安全対策を考えたい」という方は、現在の配置と課題をお聞かせください。現場に合った構成をご提案します。
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